チリの家づくりブログ 〜WELLNESTなマイホーム計画〜

住宅業界のトップランナーと共に、「一生健康で快適でエコ」な家づくりを目指します

WELLNEST HOME(ウェルネストホーム)で超高気密・高断熱住宅を建てるまでの記録です

【断熱について】ダメな温熱環境はヒトを不健康にする!?

こんにちは、チリです。

本日は2020年4月27日月曜日です。


今日は、断熱材について私が調べたことを書いていこうと思っていましたが、その前に住宅の温熱環境についての話をしておこうと思います。


以前にもこのブログ上で、住宅の断熱性能と室内空気環境(Indoor Air Quolity:IAQ)が我々の健康に及ぼす影響について考察しました。その時に、湿度(humidity)についてはかなり詳しく取り上げました⬇️

今回はそれとはまた別に、室内の温熱環境が我々の健康に与える影響について考察していきたいと思います。


ちなみに、今回私が記事をまとめるのに参考にしたものは、2018年にWHOが出した「住まいと健康に関するガイドライン( WHO Housing and health guidelines)」です。

これは住宅と健康についてのこれまでの各国の研究報告をまとめてレビューしており、それらのエビデンスをもとに、WHOが住宅についてのガイドラインを作成する、という形になっています。


医療の世界では、1992年にカナダのマクマスター大学のサケット博士とガイヤット博士が唱えた「根拠に基づいた医療(Evidence-based Medicine:EBM)」がすでに取り入れられて久しい(ただし、日本ではこの概念が曲解されて伝わっており、言葉だけが一人歩きしている状態)ですが、住宅業界においては、エビデンスに基づいた住宅設計が全く行われていないようです。先進諸国の中でも、日本はこの分野ではかなり立ち遅れているようです。


やはり、次世代に持続可能(サステナブル)な社会を受け渡していくためにも、このリアルサイエンスに基づいたエビデンスのある住宅設計(Evidence-based housing design)をこそ目指していくべきだと私は考えています。


WHOの示したこのガイドラインには大変興味深い重要なことが書いてありますので、英語の読める方はぜひ一度読んで見ることをお勧めいたします⬇️

温度と健康の関係性

疾患と温度の関係性

近年では、日本でもそうですが、世界中で気候変動により温熱環境はますます厳しいものとなってきており、健康と温度との関係性が取りざたされることが増えてきました⬇️
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/05/SYR_AR5_FINAL_full_wcover.pdf


また、温度と健康についての関係性については数多の研究報告があり、様々な疾患が人体外の温熱環境に影響されることがわかってきています。

また、室内の温熱環境が我々の健康に悪影響を及ぼすことも様々な研究報告からわかってきています⬇️

例えば、熱中症はもとより、気管支喘息やCOPDを含む呼吸器疾患、糖尿病や高血圧を含む生活習慣病、精神疾患や認知症、運動器系疾患、その他アレルギー・アトピー疾患やインフルエンザ感染や妊娠・流産に至るまで、実に多くの疾患などに、温度(気温・室温)との関連性があることが過去に報告されています。

低い室温は健康を害する

「ヒートショック(現象)」という言葉は、高気密・高断熱住宅を建てようと考えている方であれば、一度は聞いたことがあるでしょう。


しかしながら、この「ヒートショック」という言葉は、高気密・高断熱住宅を志す消費者・顧客や業者の間で、まるで合言葉のように広く用いられていますが、残念ながらこの言葉は日本でしか通用しません。

日本語でググってみると、確かに大量の検索結果が出てきて、ウィキペディアや日本医師会のHP上でも「ヒートショック」について、さも重要な病態概念であるかのような説明がされています。しかしながら、その根拠となる引用文献(reference)をチェックしてみても、日本語の文献しか出てきませんし、Pubmedで”heat shock”と調べても、”HSP(Heat Shock Protein:熱ショックタンパク質)”や、細胞レベルのストレス反応としての”Heat shock response”に関する論文しか見つかりません。

すなわち、医学的には「ヒートショック」という言葉が認められているわけではありません。


しかしながら、過去には入浴中の心筋梗塞患者の血圧・心拍数・心電図などを計測し、その変化を調べた研究報告が日本人によりされており、かなり前からこの「ヒートショック」という現象が存在する可能性については示唆されていました⬇️

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/25/2/25_2_93/_pdf

また、近年では断熱性能の良い住宅ではヒートショックが起こりにくいことをデータ解析した研究報告もされており、やはりいわゆる「ヒートショック」を防ぐためには断熱性能を向上させることが重要であることがわかります。


ところで、日本では広く用いられている「ヒートショック」という病態概念とは別に、低い室温環境が健康に悪影響を及ぼすことは以前から割と良く知られていました⬇️

低気温によって虚血性心疾患や脳卒中、気管支喘息やCOPDなどの呼吸器疾患が増悪することも著名な医学雑誌であるランセット誌に過去に報告されています⬇️

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(96)12338-2/fulltext

面白いことに、この論文では冬の寒さが厳しくなる寒冷地域よりも、比較的冬の寒さがましな(milder)地域の方が死亡率が高まることが示されています。

これは、寒冷な地域の方がより断熱性能の良い住宅が多く、むしろ断熱性能の低い比較的温暖な地域の住宅の方が、熱のロスが大きく、住宅内が寒くなるためであると考えられています。


ちなみにこれは南米の話ですが、より低コストで建てられた家は、室温環境が不安定になりやすく、健康に悪影響を与える可能性が示唆されています⬇️

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5708049/pdf/ijerph-14-01410.pdf

断熱性などが欧米先進諸国と比べても圧倒的に劣る日本のローコストメーカーでも同様のことが言えるのではないでしょうか?やはり温熱環境が一定に保てない住宅(=獣宅)では、健康が害される可能性が高いと私は考えています。


ところで、では何度以上の気温にしておけば良いのか?というと、WHOのガイドラインによれば、18度以上を保つのが良いだろう(A higher minimum indoor temperature than 18 °C may be necessary)、と記載されています。

COPDなどでは21度以上の方が良いかもしれない、ということでしたが、これはもしかしたら以前にも私の記事で書いたように、湿度との関連もあるかもしれませんので、微妙なところです。ですが、もし健康を害さない住宅にしようと思うのなら、とりあえず室温は18度以上を保つように設計すべきだということです。

低温も問題だが、高温も問題!?

室内の温度が18度を切ると健康が害されてしまうリスクが高まることはご理解いただけたかと思います(というか、WHOがそう推奨している、ということ)。

では、健康を保つための室温の上限というものはあるのでしょうか??


地球温暖化が叫ばれて久しいですが、各国では異常気象による気温上昇により、人々の健康が害されるという事象が増えているようです。


例えば、インドでは2010年5月にアーメダバードで起こった熱波により、その一ヶ月だけで、例年に比べて約43.1%(4462人)も死亡者が増加した(死因は不明)ことが報告されています⬇️


アフリカでは、1981年から2005年には平均で年間12.3回しか観測されていなかった熱波が、2006年から2015年の間には、年平均24.5回まで観測回数が増加していたという報告もあります⬇️

また、我々が住む都市部のように、温熱環境が比較的低く保たれている地域でも、熱波の影響で死亡者数が増加することが報告されており、その場合元々気温が高い地域(熱帯地域)に比べて、死亡者が増える閾値温度が低いということが知られています⬇️

International study of temperature, heat and urban mortality

これは、比較的温熱環境の保たれた地域に住んでいる人々は、熱波のような突然高温になる温度変化に身体が適応できていないためだと考えられています⬇️

これらのことから考えても、たとえ温熱環境の変化が著しい地域(熱波などがしょっちゅうやってくる地域)に住んでいなくても、これから地球温暖化の影響によってますます暑くなってくることが予想されている夏には、健康を害したり、不調を訴える人が増えてくると考えられます。


ただし、これらはそもそも外気温が高くなっていることが原因と考えられる現象であり、室内の温熱環境が人々の健康にどう影響しているか、ということを調べているわけではありませんし、具体的な気温がどれくらいになれば健康に影響が出てくるのか?ということを調べたものではありません。


しかし、気温が高くなると様々な疾患の増悪や死亡率の増加がもたらされることはいくつもの研究報告によって示唆されており、室内温度も高くなると睡眠障害や血圧の変化、心疾患に悪影響を与える可能性が示唆されています。


日本でも、夏に熱射病にかかる人は実は室外より室内の方が多いことがわかっていますし、特に高齢者は自宅で熱射病にかかりやすいことが報告されています⬇️


しかしながら、室内温度が低い場合に比べると、高い室内温度が健康に与える影響はそこまで顕著ではなく、「室内温度は〇〇度以下にしておいた方が良い」と明確に述べられるわけではないようです。


以前にWHOが出した室内温度環境と健康についての調査結果(Health impact of low indoor temperatures. Regional Office for Europe: World Health Organization; 1987)によれば、“there is no demonstrable risk to human health of healthy sedentary people living in air temperature of between 18 and 24 °C(18度から24度の室内温度環境であれば、明らかな健康リスクは健常者にはない)”と記載されており、室温は18度から24度に保つのが良いと考えられていたようです。


今回のガイドラインでも、健康リスクが高まらない室温の下限値は18度と設定されましたが、上限値については明確にはされていません。


書き方としては、


「なんかよくわかんねーけど、前回の調査では24度にしてたんだし、とりあえずその室温保ってれば、健康害されることはねーんじゃね??」


みたいな感じです(笑)


室内温度が26度を超えるくらいから人体の健康に悪影響が及ぼされる可能性が指摘されている論文(どの論文か忘れたので引用できませんでした、すいません)もあり、個人的にも24度〜26度くらいの間が健康リスクの高まらない室温の上限値ということで良いのではないか、と思います。


まとめると、健康を害しない室内温度環境にするためには、(どの部屋も)18度から24度を一年中保っていられる住宅設計をすることが重要であるということです。





以上、(室内)温熱環境と健康に関することを書いてみましたが、いかがだったでしょうか??


以前の記事で述べた湿度環境40%〜60%ということを合わせると、


室内空気環境(Indoor Air Quality:IAQ)は、

温度は18度〜24度、湿度は40%〜60%を保つのが良い

という結論になるかと思います。


このうえで、さらにVOC(揮発性化学物質)フリーな住宅であれば完璧ですね!!


ちなみにウェルネストホームでは、平均的な大きさ(35坪程度)と家族構成(4人)の住宅で、エアコン一台で加湿器なしでこのレベルのIAQを一年中どの部屋も保つことができるそうです。


さて、ウェルネストホーム以外でこのIAQを一年中保つことのできる住宅メーカーが、今この日本にはどれくらい存在しているのでしょうか??




ちなみに、ウェルネストホーム代表の早田さんが温度と湿度についてまとめて解説されている動画がありますので、参考までに⬇️


夏場はエアコン、冬場は加湿器で部屋が年中結露してしまう!? 住宅に最適な温度と湿度とは?家づくりノウハウ Q&Aシリーズ


今日も断熱材のこと書けなかったので、次回必ず書きます。

すいません・・・。